2023年3月の「公衆PHSサービス終了」伴い、「構内PHS」＝「医療用PHS」を利用して病院やクリニックにも影響が出ることが予想されます。

そもそも、PHSサービスは、なぜ終了したの？

PHS（Personal Handy-phone System）が終了した主な理由は、技術の進化と需要の低下によるものです。以下の要因がPHS終了に至った背景です。

1. 技術の老朽化

PHSは1990年代に登場した技術であり、当時の標準的な通信方式でした。しかし、3Gや4G、そして5Gのようなより高速で多機能な通信技術が登場するにつれ、PHSの通信速度や機能は相対的に劣るようになりました。特に、データ通信のニーズが増える中で、PHSは音声通話に特化していたため、その限界が明確になりました。

2. 利用者数の減少

携帯電話やスマートフォンの普及により、一般消費者やビジネス利用者は、PHSからスマートフォンに移行しました。これにより、PHSの需要が急激に減少し、サービスの維持が経済的に困難になりました。NTTドコモやソフトバンクなど、主要通信事業者がPHSのサービスを段階的に縮小し、ついに提供終了となりました。

3. インフラ維持コストの増加

PHSサービスを維持するためには、基地局や関連インフラを保守する必要がありますが、利用者数の減少に伴い、インフラの維持コストが事業者にとって大きな負担となっていました。また、新しい通信技術に投資するほうが将来的に有望であったため、事業者はPHSのインフラ更新を行わず、終了を選択しました。

4. 新技術への移行促進

PHSを使い続けるよりも、4G LTEや5G、Wi-Fi、sXGPといった新技術への移行が望まれるようになりました。これらの技術は、音声通話だけでなく、データ通信やIoT（モノのインターネット）に対応しており、より幅広い用途をカバーできるため、PHSの後継技術として適しています。

5. 医療機関など特殊用途への影響

PHSは、特に日本の医療機関などで非常に広く使われていました。PHSの終了は医療機関に大きな影響を与えましたが、sXGPやWi-Fi通話などの新しい技術がその代替手段として提供されることで、この課題が解消されつつあります。

これらの理由により、PHSは2023年3月31日をもって日本国内でのサービスが完全に終了しました。

公衆PHSサービスの終了が、医療用PHSに与える様々な影響

以下では、具体的な影響と、今後の準備について説明します。

1. 公衆PHS終了による構内PHS利用病院の不便や問題

影響・不便：

    端末や部品の供給が困難に： PHS端末の製造が終了しているため、病院内で使用しているPHS端末が故障した際に、新しい端末や交換部品が入手しにくくなります。特にバッテリーや充電器などの消耗品が確保できない場合、端末の寿命が短くなり、運用に支障をきたす可能性があります。

    サービス終了による技術サポートの減少： PHS関連の技術サポートやメンテナンスが徐々に減少することが予想されます。サポートを受けられない場合、端末のトラブルやシステム障害が発生した際に、迅速な対応が難しくなることがあります。

    セキュリティリスクの増加： 公衆PHSが終了することで、構内PHSの技術も時代遅れとなり、セキュリティ上のリスクが増加する可能性があります。新しい通信技術に比べて、PHSはセキュリティ対策が十分ではなく、データの安全性や通信の信頼性が低下する懸念があります。

    維持コストの増加： 構内PHSを維持するためのコストが、機器の古さや部品の不足により増加する可能性があります。特に、代替手段の導入を後回しにすると、長期的にはPHSの維持コストが割高になる場合があります。

PHSサービスの終了に伴い、PHS端末の価格が高騰

PHSサービスの終了に伴い、特定の条件下ではPHS端末の価格が高騰する可能性があります。特に、病院などでの利用が続いている構内PHS端末については、サービス終了までの移行期間中に以下のような影響が考えられます。

1. PHS端末の価格高騰の可能性

    需要と供給のバランス：PHS端末の供給は今後減少していく一方で、まだPHSを利用している病院や企業が一定数存在します。特に、サービス終了までの移行期間中に故障した端末の代替機を購入する必要がある場合、需要が供給を上回る可能性があります。この結果、PHS端末の価格が一時的に高騰することが考えられます。

    製造の終了：PHS端末の製造は既に終了しているか、終了が近いと予測されます。そのため、新品の在庫が少なくなり、中古市場での価格が上昇する可能性もあります。

2. 関連製品の価格高騰の可能性

PHS端末に限らず、サービス終了に伴って価格が高騰する可能性のある関連製品もあります。

    PHS対応バッテリー：PHS端末に必要なバッテリーや充電器の供給も減少するため、これらの価格が上昇する可能性があります。特に、既存の端末を長期間使用したいと考える医療機関や企業が予備のバッテリーを確保しようとする場合、需要が集中することがあります。

    PHS用アクセサリ：例えば、ホルスター、ヘッドセット、クリップなど、PHS専用アクセサリが高騰する可能性があります。これも供給が減少する一方で、既存の利用者が購入を続けるためです。

3. 移行先技術の関連製品

PHSの代替技術であるsXGPやVoIP、スマートフォン通信システムに対応した機器やアクセサリに対する需要も高まります。特に、以下のような関連製品の価格が高騰する可能性があります。

 sXGP対応の端末や基地局：移行が進む中で、sXGP対応の端末や基地局などのインフラ機器への需要が増加します。これに伴い、価格が上昇することがあります。特に、複数の病院や企業が同時に移行する場合、供給が追いつかない可能性があり、導入コストが増大することがあります。

    VoIP端末やアクセサリ：Wi-Fi通話やVoIPを利用するための端末や、これに対応するヘッドセットやマイクなどの周辺機器も需要が増えるため、価格が高騰する可能性があります。

4. 中古市場の動向

PHS終了前後の期間では、中古市場でのPHS端末や関連機器の取引が活発になる可能性があります。特に、病院などでの急な故障や端末の追加が必要な場合に、中古品の価格が上昇することがあります。

対策

PHSサービス終了を見越して、早めに代替技術への移行を進め、必要な機器を適切に確保することが、予想外のコスト上昇を防ぐ鍵となります。また、中古市場の動向にも注視しつつ、必要に応じて早めに部品や端末の確保を行うことが推奨されます。

いつまでにどのような準備が必要か？

移行のスケジュール：

2024年～2025年初頭：検討と準備

PHSサービスの終了に備え、病院は早期に移行計画を立てる必要があります。代替通信技術（sXGPやVoIPなど）について調査し、自院のニーズに合った技術を選定します。また、移行にかかるコストや導入のスケジュールを考慮し、予算計画を立てることが重要です。

2025年中：機器の導入とテスト運用

新しい通信技術を導入し、テスト運用を行います。この段階でスタッフに対して使用方法を教育し、既存のPHSからのスムーズな移行を目指します。特に、医療機関内の通信が途絶えることがないよう、段階的に新旧システムを並行運用することが推奨されます。

2025年後半～2026年初頭：完全移行

PHSサービス終了直前に、新システムへの完全移行を完了させます。このタイミングで、古いPHS端末や基地局の撤去を行い、不要な設備を整理します。

必要な準備：

代替技術の選定：

構内PHSの代替として、**sXGP（免許不要で利用可能なプライベートネットワーク）やVoIP（Wi-Fi通話）**などが一般的な選択肢です。どの技術が自院の通信環境や予算に適しているかを検討します。

通信インフラの整備：

新しい通信技術を導入するためには、無線ネットワークの設計や基地局の設置が必要です。Wi-Fiを利用する場合、病院全体をカバーする安定したWi-Fi環境を整備する必要があります。

スタッフ教育：

新しい通信システムの導入に伴い、医療スタッフに対してシステムの使用方法や新しい端末の使い方に関するトレーニングを行います。これにより、移行後の業務がスムーズに進行します。

セキュリティ対策：

新しいシステムに移行する際には、データ通信のセキュリティを強化することが必要です。特に、医療機関では患者情報が含まれるため、暗号化やネットワークのセキュリティ強化を検討します。

早期に代替手段を導入する準備を進めることが重要です。

代替えとして期待される「sXGP」とは

sXGP（Super eXtended Global Platform）は、次世代の無線通信技術で、日本のPHS（Personal Handy-phone System）サービスの後継技術として注目されています。sXGPは、ローカル5GやLTE技術を基盤にしたプライベートネットワーク技術で、免許が必要ない周波数帯（1.9GHz帯）を利用します。医療機関での通信ニーズに特化して設計されており、音声通話だけでなく、データ通信も安全かつ安定して行えるため、PHSの置き換えに適した技術です。

sXGPの特徴と医療機関での利用方法

特徴：

    免許不要の周波数帯：sXGPは免許不要で利用できる1.9GHz帯を使うため、導入コストが比較的低く、既存のネットワークに容易に組み込める。

    セキュリティと安定性：プライベートな無線ネットワークとして、安全性と安定性が高い。病院などの機密性が高い環境においても、通信の盗聴や妨害のリスクを減らすことができる。

    広範な用途：音声通話はもちろん、データ通信や画像の転送など、多目的に利用できるため、PHS以上の柔軟性がある。

医療機関での利用例：

    スタッフ間の通話：ナースコールや院内の医師・看護師の連絡手段として利用される。PHS同様に、院内移動中でも安定した通話が可能。

    データ通信：電子カルテシステムや画像診断データなど、大容量の医療データの転送にも対応できる。

    医療機器のモニタリング：無線で接続された機器のデータ収集やアラート管理などが可能。

導入のための準備

    ネットワークインフラの確認：sXGPの導入には、院内の無線ネットワーク環境を整える必要があります。専用の基地局や端末の導入が求められますが、PHS基地局が既に設置されている場合、それをsXGP向けにアップグレードできるケースもあります。

    周波数帯の使用確認：sXGPは1.9GHz帯を使いますが、免許不要で利用できる範囲での設定が必要です。

    端末や機器の準備：sXGP対応の端末や通信機器を導入し、スタッフにその使用方法を教育する必要があります。

sXGPを導入すべき医療機関

以下の課題を抱える医療機関にとって、sXGPは有効なソリューションです。

    PHSサービス終了の影響を受ける医療機関：PHSサービスが終了したため、代替の通信手段を探している病院。sXGPは、PHSの機能を代替できる上に、データ通信の機能も強化されています。

    セキュリティの強化が必要な医療機関：患者情報を安全に管理し、セキュアな無線通信を求める施設。sXGPは閉域網として、外部の干渉や盗聴を防ぐ設計がなされています。

    通信の安定性に課題がある医療機関：Wi-Fiの不安定なエリアや、既存の通信インフラが限界を迎えている病院。sXGPは安定した接続性を提供でき、通信の品質が向上します。

sXGPはPHSサービスの置き換えとなるか？

sXGPはPHSの直接的な後継として位置づけられていますが、PHSを超える機能も提供します。音声通話に加え、データ通信機能が充実しているため、単なるPHSの代替というより、より多機能な医療向け通信プラットフォームと考えるべきです。