【セキュリティ講座⑨】人材不足の中小企業が選ぶべきセキュリティ外部パートナー
はじめに
「セキュリティは重要だと理解しているが、専任担当者を置く余裕がない」――こうした悩みは、多くの中小企業が抱える現実です。
IPA(情報処理推進機構)の調査によれば、日本では数十万人規模のセキュリティ人材が不足しており、大企業でも人材確保が難しい状況です。中小企業が自前で専門スタッフを確保するのは、現実的に厳しいと言わざるを得ません。
このような状況で頼りになるのが、外部パートナーです。本記事では、中小企業が限られたリソースの中で信頼できるパートナーを見極め、セキュリティ体制を整える方法について解説します。
中小企業におけるセキュリティ人材不足の背景
中小企業が専門人材を確保しにくい理由は、主に以下の4点です。
- 採用難:市場全体で人材が不足しており、求人を出しても応募が少ない
- コスト制約:フルタイムで専門人材を雇用すると年収600~800万円以上が必要
- 業務範囲の広さ:IT担当者がPC管理からネットワーク保守、セキュリティまで幅広く兼任
- 実務経験不足:実際のサイバー攻撃に対応した経験を積む機会が少ない
結果として、「守るべき情報やシステムは大企業並みにあるのに、人も予算も不足している」というギャップが生まれています。
中小企業が活用できる外部パートナー
外部パートナーには、さまざまな種類があります。
IT保守ベンダー
特徴:日常のPCやネットワークの保守を任せている会社
メリット:自社システムの理解があり、相談しやすい
注意点:高度なセキュリティ知識は持っていない場合がある
セキュリティ製品ベンダー・販売代理店
特徴:EDRやUTMなどの製品を販売・導入支援
メリット:製品知識が豊富
注意点:運用やインシデント対応まで任せられるとは限らない
マネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)
特徴:ログ監視やアラート対応などを外部から実施
メリット:24時間体制で監視可能
注意点:月額費用が発生し、連携体制を整える必要がある
MDR
特徴:EDR/XDR運用を外部の専門家に委託
メリット:高度な調査・対応まで任せられる
注意点:利用可能な製品が限定される場合がある
コンサルティング会社
特徴:セキュリティポリシー策定や教育支援
メリット:経営層向けの戦略立案に強い
注意点:日常運用や監視業務は担当しないことが多い
外部パートナーを選ぶ際のポイント
自社の課題に合っているか
日常の運用を任せたいのか
高度なインシデント対応を求めるのか
全体の戦略を整備したいのか
→ 目的によって最適なパートナーは変わります
契約範囲と責任分界点を明確にする
どこまで外部に任せ、どこからは自社対応か
例:アラート検知は外部、経営層への報告は自社
緊急時の対応力
夜間・休日も対応可能か
インシデント時に「誰に」「どう連絡するか」を明確にしておく
コストと効果のバランス
月額数万円で利用できるサービスもあれば、数十万円かかるものもある
「何を守るための投資か」を明確にし、費用対効果を検討
中小企業向けの現実的モデル
現実的には、次のような組み合わせが有効です。
IT保守ベンダー × セキュリティサービス
→ 日常のITサポートは身近な業者に任せ、セキュリティ監視はMSSPに委託
Microsoft 365+MDRサービス
→ DefenderやIntuneを基盤に、監視・対応を専門ベンダーに任せる
必要に応じたコンサル連携
→ 年数回だけポリシー見直しや教育を外部専門家に依頼
こうした「ハイブリッド型」の活用が、中小企業にとって現実的かつコスト効率の良い方法です。
まとめ
セキュリティ人材の不足は当面続くと考えられます。中小企業が注力すべきは、自前で人材を抱えることではなく、信頼できる外部パートナーを上手に活用することです。
- 自社の課題を明確にする
- 目的に応じたパートナーを選ぶ
- 契約範囲と責任をはっきりさせる
- 緊急時の対応体制を確認する
これらを押さえることで、限られたリソースでも持続可能なセキュリティ体制を築くことができます。




