サイバーセキュリティ2025.12.10(更新日:2025.11.05)

【セキュリティ講座⑧】インシデント発生時に中小企業が取るべき初動対応

はじめに

どれだけセキュリティ対策を強化していても、「絶対に攻撃を受けない」わけではありません。マルウェア感染、ランサムウェア、内部不正、情報漏えい――これらは大企業だけでなく、中小企業でも頻繁に発生しています。

特に中小企業では、インシデントが発生した際の 初動対応 が遅れることで被害が拡大し、事業継続に深刻な影響を与えるケースが少なくありません。

今回は、中小企業が現実的に取るべき「初動対応」のポイントを整理します。

初動対応の重要性

サイバー攻撃は「感染直後」よりも、その後の展開(情報流出、横展開、暗号化)で被害が大きくなります。

初動が遅れると

→ ランサムウェアにより社内すべてのサーバーが暗号化される
→ 顧客情報が外部に送信され、信用失墜につながる

初動が早ければ

→ 感染端末を隔離し、被害を最小限に抑えられる
→ 証拠を確保し、原因調査や再発防止につなげられる

「何を最初にやるか」で結果は大きく変わるのです。

中小企業が直面する現実的な課題

セキュリティ専任担当者がいない

運用マニュアルが整備されていない

インシデント対応の経験がほとんどない

「誰に連絡するか」が社内で共有されていない

こうした状況を前提に、誰でも取れる現実的な初動対応が求められます。

初動対応の流れ(最低限のステップ)

ステップ1:発見・通報

社員が「不審なメールを開いた」「端末の動作が異常」などを感じたら、すぐに報告できる体制を用意

「迷ったら報告する」文化づくりが重要

ステップ2:影響範囲を限定(端末の隔離)

ネットワークケーブルを抜く、Wi-Fiをオフにするなど、通信を遮断

電源を落とすかどうかは状況次第(証拠保全を優先する場合もある)

ステップ3:初期対応チームへの連絡

IT担当者、上長、外部の保守ベンダー、セキュリティサービス提供者へ連絡

「誰に最初に電話するか」を社内ルールとして明確化しておく

ステップ4:証拠の保全

ログやメール、画面キャプチャを残す

「再インストールですぐ復旧」では原因究明ができず、再発防止につながらない

ステップ5:社内外への連絡準備

被害が顧客や取引先に及ぶ場合は、早期に連絡・説明が必要

ただし、事実確認前に過度な情報を流すと混乱を招くため注意

やってはいけないNG対応

自己判断でウイルス対策ソフトを実行し続ける

→ 感染の痕跡を消してしまい、調査できなくなることがある

被害を隠す

→ 発覚が遅れて被害拡大、取引先からの信用喪失につながる

誰にも報告せず放置する

→ 社員が異常を見過ごすことで被害が拡大する典型例

事前に準備すべきこと

インシデント対応は「準備がすべて」といっても過言ではありません。

連絡体制の整備

→ 「発見したら誰に報告するのか」を一覧にしておく

初動マニュアルの作成

→ 端末隔離の方法、ログの残し方などを図解付きで簡潔に

外部ベンダーとの契約確認

→ 緊急時に駆けつけやリモート対応が可能かどうか事前確認

訓練・リハーサル

→ 年に1回でも「想定演習」を行うことで、いざという時に慌てない

まとめ

インシデントは「発生するかどうか」ではなく「いつ発生するか」の問題です。
特に中小企業はリソースが限られているからこそ、初動対応を仕組み化しておくことが何より重要です。

発見したら迷わず報告

まずは感染端末を隔離

証拠を残して外部ベンダーに連絡

社内外への説明は事実を確認したうえで冷静に

こうした基本を徹底することで、被害を最小限に抑え、事業継続と信用を守ることができます。

次回(第9回)は、「セキュリティ人材が不足する中で、中小企業が選ぶべき外部パートナー」について解説します。


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