サイバーセキュリティ2025.10.22(更新日:2025.09.12)

【セキュリティ講座④】SOCとMDRとは? EDR/XDRを活かす“運用体制”の現実

はじめに

これまでのセキュリティ講座では、Microsoft Defenderの基本機能やエンドポイントセキュリティ製品の選び方、さらにEDR/XDRの特徴と導入のポイントについて解説してきました。
今回のテーマは、それらを実際に活用していく上で欠かせない SOC(Security Operation Center:セキュリティ運用センター)MDR(Managed Detection & Response:運用委託サービス) です。

「EDR/XDRを入れたけれど、うまく使いこなせていない」という声は少なくありません。なぜなら、これらの製品は単体では“検知”や“警告”を出すだけであり、最終的に判断・対応するのは人間の役割だからです。

SOC(セキュリティ運用センター)とは

SOCとは、企業や組織のセキュリティログを集約・監視し、インシデントが発生した際に迅速に対応する専門チームです。

SOCの役割

・24時間365日の監視体制

・膨大なアラートの中から本当に危険なものを見極める

・攻撃の全体像を把握し、関係部門にエスカレーション

・改善策や再発防止策の提案

SOCのメリット

・高度な専門知識を持つアナリストが対応

・早期発見・早期対応で被害を最小化

・法令対応や監査にも活用できるレポートを提供

SOCの課題

・専門人材を社内で確保・育成するのは困難

・運用コストが高額になりやすい

・アラートの“ノイズ”をさばくために成熟した運用が必要

MDR(Managed Detection & Response)とは

MDRの特徴

・EDR/XDRからのアラートを専門家が分析

・インシデント発生時には一次対応(隔離・遮断など)を実施

・必要に応じて詳細な調査報告や復旧支援も提供

・月額課金型で導入でき、初期投資が抑えられる

MDRのメリット

・専門人材を自社で抱える必要がない

・24時間監視体制を低コストで実現可能

・最新の脅威インテリジェンスを活用できる

MDRの課題

・外部委託のため、自社業務とのすり合わせが必要

・インシデント対応の最終判断は自社が行うケースが多い

・利用範囲やサービスレベルによってコストが増加する

SOCとMDR、どちらを選ぶべきか?

実際に選択する際には、自社の規模・リソース・求めるセキュリティレベルを考慮する必要があります。

大企業や金融機関

→ 社内SOCを設置し、MDRも併用する二重体制でリスクを最小化

中堅企業

→ EDR/XDRを導入しつつ、MDRを活用して監視・対応を外部委託

中小企業

→ クラウド型EDR+MDRを選び、セキュリティ担当者を置かなくても安心できる環境を整備

重要なのは「自社でどこまで対応できるか」を明確にし、不足を外部サービスで補うことです。

実際の導入・運用の現実

EDR/XDRを導入した企業が直面しがちな課題は「アラートの多さ」と「対応の専門性」です。
例えば、1日に数百件ものアラートが上がった場合、その全てを確認し対応するのは現実的ではありません。

人材不足:中小企業には専任のセキュリティ担当がいないことが多い

知識不足:EDR/XDRのアラート内容を理解し、正しく判断するスキルが必要

対応スピード:初動対応が遅れると、数時間で被害が拡大する可能性がある

こうした現実を踏まえ、EDR/XDRを「導入したら安心」ではなく、運用体制まで含めて設計することが欠かせません。

まとめ

EDRやXDRは非常に強力なセキュリティ対策ですが、それを最大限に活かすには「運用」が不可欠です。SOCやMDRは、その運用を支える仕組みとして、企業規模に応じた柔軟な選択肢を提供してくれます。

・SOCは専門チームを自社または外部に設け、24時間の監視体制を構築する仕組み

・MDRはその監視・対応を外部に委託できるサービスで、特に中小企業に有効

・導入する際は、自社のリソースとセキュリティ要件に合わせて「どこまで内製化するか」「どこを外部に任せるか」を明確にすることが重要

次回(第5回)は、具体的な セキュリティ運用のステップと、企業が直面しやすい落とし穴 を解説します。

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