「DNSサーバーはルーターだけじゃない?Windows Serverが担う企業ネットワークの要」
会社やオフィスのネットワークに関わる中で、「DNSサーバー=ルーター」と考えていた方も多いのではないでしょうか。確かに、一般的な家庭用ルーターや小規模オフィス用ルーターには、DNSリレー機能(プロバイダーのDNSサーバーにアクセスを仲介する機能)が備わっており、実質的にDNSの役目を果たしてくれています。
しかし、ネットワークの規模が大きくなる企業環境では、DNSサーバーとしてWindows Serverを導入・活用するケースが多く見られます。なぜわざわざサーバーでDNSを動かす必要があるのでしょうか?
今回は「DNSサーバーとは何か?」という基本から、Windows ServerをDNSサーバーとして使用する必要性までを、わかりやすく解説していきます。
そもそもDNSとは?
DNS(Domain Name System)とは、インターネット上の「名前(ドメイン名)」と「住所(IPアドレス)」を結びつける仕組みです。たとえば、私たちがWebブラウザで「www.google.com」と入力したとき、裏側ではDNSサーバーがその名前に対応するIPアドレス(例:142.250.206.4)を調べて、正しく接続を導いてくれているのです。
これがなければ、インターネットは「数字の羅列(IPアドレス)」でしかアクセスできず、非常に不便になります。
家庭ではルーターがDNSの役目をしている
家庭用ルーターでは、プロバイダーから自動でDNSアドレスを取得し、各パソコンやスマートフォンにその情報を流しています。そのため、特別なDNSサーバーを構築しなくても、問題なくインターネットが使えるわけです。
企業ネットワークではWindows ServerがDNSサーバーになる理由
ところが企業ネットワークでは、より細かく制御された内部の名前解決が必要になります。以下が、企業でWindows ServerをDNSサーバーとして活用する主な理由です。
1. Active Directoryとの連携
Windows Serverを使って社内のユーザー認証やパソコンの一元管理を行う「Active Directory(AD)」を導入している場合、DNSはその中核を担います。ADでは、ユーザーやコンピューターの情報を正確にDNSで解決できなければ、ログオンやファイル共有などに支障をきたします。
つまり、ADの安定運用には、社内向けDNSサーバーが必須です。
2. 内部リソースの名前解決
社内のファイルサーバーや業務アプリケーション、プリンターなどを、IPアドレスではなく「\fileserver」「\printserver」などの名前でアクセスする場合、それらの名前を正しく解決するDNSサーバーが必要になります。これをルーターに任せることは基本的にできません。
Windows ServerのDNSなら、こうした「内部向けの名前解決(ローカルDNSゾーン)」を自在に管理できます。
3. セキュリティ・管理性の向上
ルーター経由のDNSでは、社員の端末がどこにアクセスしているか把握できませんが、Windows ServerのDNSログを活用すれば、不審なアクセスの調査やセキュリティ対策にも役立ちます。
また、業務時間中に特定のサイト(例:動画サイト、SNS)へのアクセスをブロックしたり、リダイレクトしたりする制御もDNSレベルで可能です。
DNSサーバーは一つじゃなくても良い
なお、Windows ServerのDNSとルーターのDNSは共存が可能です。Windows Serverを社内向けのDNS(内部解決用)として設定し、外部の名前解決(インターネットアクセス)は、ルーターやプロバイダーのDNSへ転送する、といった構成が一般的です。
結論・企業ネットワークの中核は「Windows Server+DNS」
「DNS=ルーターで十分」と考えていた方にとっては、Windows ServerがDNSサーバーとして使われる理由が、少し意外だったかもしれません。しかし、企業のITインフラを安全かつ効率的に運用するためには、DNSの仕組みを理解し、必要に応じてWindows Serverで運用することが重要です。
特に、Active Directoryを導入している企業であれば、Windows ServerのDNSはまさに「縁の下の力持ち」として欠かせない存在です。