介護施設のナースコール設置基準について教えてください。
介護施設でのナースコール設置基準は、利用者の安全確保と迅速な対応を目的として、施設の種類や特性に応じて厚生労働省によって定められています。それぞれの施設における基準や要件について解説します。
ナースコール設置基準(厚生労働省)を見てみましょう
◆特別養護老人ホーム(特養)
【居室】ブザー又はこれに代わる設備を設けること。
【トイレ】ブザー又はこれに代わる設備を設けるとともに、介護を必要とする者が使用するのに適したものとすること。
◆老人介護保健施設(老健)
【療養室】ナースコールを設けること。
【トイレ】ブザー又はこれに代わる設備を設けるとともに、身体の不自由な者が使用するのに適したものとすること。
◆軽費老人ホーム(ケアハウス)
【居室】緊急の連絡のためのブザー又はこれに代わる設備を設けること。
◆有料老人ホーム(有料)
緊急通報装置を設置する等により、入居者の急病等緊急時の対応を図ること。 ・要介護者等が使用するトイレは、居室内又は居室のある階ごとに居室に近接して設置することとし、緊急通報装置等を備えるとともに、身体の不自由な者が使用するのに適したものとすること。
※サービス付き高齢者住宅やグループホームに、法令による設置基準は設けられていません。
法令プラス・α
◆特別養護老人ホーム(特養)
・設置場所
各居室、トイレ、浴室、食堂、共用スペースなどに設置が求められます。利用者が緊急時に迅速に職員に連絡できることを目的としています。
・通報先
職員が常駐するステーションまたは該当職員の携帯端末にコールが届くシステムが必要です。
・利便性
身体が不自由な利用者でも操作しやすいよう、ボタンの位置や形状に配慮します。
◆介護老人保健施設(老健)
・設置場所
居室(個室、多床室を問わず)、トイレ、浴室に設置が義務付けられています。
医療ケアを必要とする利用者が多いため、特にトイレや浴室での緊急対応を想定した設計が求められます。
・通報先
看護師や介護士が迅速に対応できるよう、24時間体制で監視できる場所(ナースステーションなど)に接続。
・耐久性・信頼性
医療機器としての基準を満たす高い耐久性と信頼性が必要です。
◆軽費老人ホーム(ケアハウス)
・設置場所
居室とトイレには必須で設置する必要があります。
軽費老人ホームは比較的自立した高齢者が対象ですが、緊急時のための備えが求められます。
・通報先
常駐職員の事務室や夜間の当直職員に通知が届くシステムを構築します。
・追加の配慮
自立度が高い利用者に合わせて、設置場所や操作方法が過剰にならない設計が望まれます。
◆有料老人ホーム
・設置場所
各居室、トイレ、浴室に設置する必要があります。
高齢者の生活環境全般で緊急事態に対応可能な設計が義務付けられています。
・通報先
施設内の管理室、職員用端末に通知を送るシステムが必要です。
・機能性
高級な有料老人ホームでは、音声通信機能やモニタリングシステムなどの付加機能がついた高度なナースコールが採用されることもあります。
◆グループホーム
設置場所
居室とトイレには設置が必要です。ただし、グループホームは小規模な家庭的環境を重視するため、施設全体の過度な設備化は避けられます。
通報先
スタッフルームや常駐職員の携帯端末に接続するシステムが必要です。
特記事項
認知症対応型共同生活介護を提供する施設であるため、利用者が混乱しないシンプルな操作性が重要です。
施設共通のポイント
ナースコールは、高齢者の安全確保、職員の迅速な対応、施設の信頼性向上を目的とし、各施設の基準は、法令に基づいて決められています。
それゆえ、定期的な点検・メンテナンスも重要で、不具合が発生した場合は迅速に修理する体制を整備する必要があります。
機能や性能、導入時のポイントは?
基本機能として、入居者が緊急時に簡単に呼び出せることが必須ですから、ボタンやコードを操作することで職員に通知が届く仕組みが必要です。
介護職員がいるステーション、事務室、または携帯端末に通報内容が届く必要があります。音、ランプ、振動で通知を送るなど多様な方法で通報される仕組みが望ましいといえます。
さらに、ナースコールを通じて、利用者と職員が双方向の会話を行えると状況確認が迅速にでき、対応の適切性が向上します。
また、高齢者や身体が不自由な方でも簡単に操作できるデザイン(大きなボタンや軽い操作力)、あるいは、認知症の利用者にもわかりやすいシンプルなインターフェースが望ましいと言えます。
ボタン、コード引き、だけでなく、タッチセンサー、音声認識など、多様な方法で呼び出しが可能だと、多様な入居者様に対応できます。
操作性だけでなく、安全・信頼、頻繁に使用されるため、耐久性が高く故障しにくい設計が必要です。
介護職員が、浴室やトイレで使用する受信用端末(PHSやスマートフォン)は、防水仕様が求められます。
停電・電源障害・通信障害時でも動作するようなバックアップ機能を備えていると万が一の時にパニックになりません。
スマートフォンや専用端末と連携し、職員が施設内外でコール対応できる事は
現場の効率向上・経営の観点からも重要です。
通報の履歴が残ることは、介護事故防止やサービス改善に役立ちます。
コールが受理されたことを利用者に知らせるフィードバック機能(点灯や音声で通知)は、利用者の不安を軽減。
見守りセンサー、転倒検知システム、心拍・体温モニタリングデバイスと連携する事でさらに迅速な対応、情報の共有が可能になります。
導入時のチェックポイント
施設の規模とニーズに適合しているか。
利用者の身体状況や認知症対応に合っているか。
職員が使いやすく、負担軽減につながるか。
信頼性が高く、故障時の対応体制が整っているか。
まとめ
介護施設でナースコールに求められる機能は、「利用者の安全」「職員の効率化」「施設の信頼性」を実現するために進化しています。施設の特性や運用方針に応じたシステムを選択することが重要です。特に近年では、IT技術やIoTを活用した高機能なナースコールが注目されており、長期的な視点での選定が求められます。