医療DX2025.07.02(更新日:2025.08.01)

ネットワーク再構築の前に確認!施設側がベンダーへ提供すべき情報とは?

少子高齢化が進む中、有料老人ホームや介護施設でも、インターネットを活用した業務やサービスが急速に拡大しています。記録入力や見守りシステム、テレビ会議、利用者の家族とのビデオ通話など、ネットワークの果たす役割は年々大きくなっています。

しかし、いざネットワークの再構築やWi-Fi環境の見直しをしようとすると、「どこから手を付けて良いのか分からない」という声も少なくありません。特に、施設の管理者側(ユーザー側)からベンダー(工事業者)へ提供すべき情報が不足していると、調査や設計がうまく進まず、結果的にトラブルや工期遅延の原因となることもあります。

本記事では、有料老人ホームなどの施設でネットワークやWi-Fiを再構築する際に、ユーザー側がベンダーへ提供すべき重要な情報を整理し、解説していきます。

建物の設計図面(特に弱電・LAN配線図)

まず最も重要で、かつ多くの施設で見落とされがちなのが建築当時の「建築図面」や「弱電配線図」です。

なぜ必要なのか?

  • 配線ルートの確認ができる
  • 天井裏や壁内の配線状況がわかる
  • 既存LANケーブルの位置や数が把握できる
  • 新たなアクセスポイントの設置計画を立てやすい

特に「弱電図」には、TV、電話、ナースコール、LANなどの配線情報が記載されており、ネットワーク機器の設置場所や経路の把握に欠かせません。

もし図面がない場合は、現地で配線を1本ずつ追跡調査する必要があり、時間と費用がかかります。

既存のネットワーク構成情報

再構築前に、現在のネットワーク構成がどうなっているかを把握することも非常に重要です。以下のような情報を提供できると、ベンダー側の設計・提案も的確になります。

提供すべき内容:

  • 現在使用しているルーターの機種・設置場所
  • スイッチ(HUB)の設置場所と接続先
  • アクセスポイントの設置場所(あれば)
  • 利用しているIPアドレス帯域やVLANの有無
  • ネットワークにつながっている機器の種類と台数(PC、プリンタ、ナースコール連携機器など)

可能であれば、簡単なネットワーク構成図(手書きでも可)があるとベンダーも非常に助かります。

ルーターやネットワーク機器のログイン情報

セキュリティ上の観点で敬遠されがちですが、既存のネットワーク機器へのログイン情報(管理画面のID・パスワード)は、再構築において非常に重要です。

なぜ必要か?

  • 機器の設定内容を確認・引き継ぎできる
  • 現在のDHCP設定やルーティング設定を確認可能
  • 問題が起きた際にログを確認できる

ログイン情報が提供されない場合は、初期化するしかなくなり、既存環境の継承が困難になります。再構築後に思わぬトラブルが起きることにもつながりますので、事前にパスワードの確認と共有をしておきましょう。

インターネット契約情報(プロバイダや回線種別)

施設が契約しているインターネット回線の情報も、再構築時には必須です。

提供すべき情報例:

  • 回線の種類(フレッツ光、光コラボ、CATVなど)
  • 契約者名義、契約回線数
  • ONU(回線終端装置)の設置場所
  • プロバイダ情報(接続IDやパスワード含む)

これらの情報が分からないと、再構築後にインターネットが使えないトラブルになる可能性もあります。工事前に契約書や利用明細を確認しておきましょう。

施設内の通信機器の利用状況

施設内では、Wi-Fiやネットワークを利用している機器が多岐にわたります。これらの機器の通信条件や設置場所の情報も、ネットワーク設計に影響します。

主な確認対象:

  • 見守りシステム(例:眠りSCAN、AAMSなど)
  • 無線ハンディ端末(介護記録入力端末など)
  • Wi-Fi対応テレビ、ネット対応ナースコール
  • セキュリティカメラ(IPカメラ)
  • Web会議用機器

こうした情報を共有することで、「どの部屋でどんな用途で通信を使っているか」が明確になり、電波設計やトラフィック設計の精度が高まります

スタッフの運用状況と課題

最後に意外と見落とされるのが、日常の運用における課題や困っている点のヒアリング内容です。

  • どこでWi-Fiが届かないか?
  • 通信が遅くなる時間帯はあるか?
  • スタッフ間で使いづらいと感じている点は?

こうした**現場の“生の声”は、ネットワーク設計において非常に重要な情報源です。例えば「夜間に見守りデバイスが頻繁に切れる」という声があれば、帯域の割り当てやAPの設置位置を見直す判断材料になります。

まとめ

ネットワークの再構築は、単なる配線工事ではなく、施設運営の根幹を支えるインフラの見直しです。そのためには、ベンダー任せにせず、施設側も積極的に情報を整理・提供することが成功の鍵になります。

以下が、ベンダーに提供すべき情報のまとめです:

  1. 建築図面(特に弱電・LAN配線)
  2. 現在のネットワーク構成情報
  3. 既存機器のログイン情報
  4. インターネット契約情報
  5. 通信機器の利用状況
  6. 現場の課題・ヒアリング内容

情報がそろっていればいるほど、設計・施工の精度は高まり、費用やトラブルを抑えることができます

施設にとってネットワークは“空気”のような存在。問題が起きてからでは遅いのです。再構築の際は、ぜひ本記事をチェックリスト代わりにお使いください。


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