医療DX2025.08.06(更新日:2025.08.01)

【業者向け】有料老人ホームのWi-Fi環境構築に必要な「現場調査」の手順とポイントとは?

高齢者施設において、Wi-Fi 環境の整備は今や必須のインフラとなっています。介護記録のデジタル化、見守りセンサー(眠りSCAN など)の利用、職員のスマホやタブレット端末の活用、入居者やご家族のインターネット利用まで、その用途は多岐に渡ります。

このような施設でWi-Fi 環境を構築するにあたり、最初に実施すべきステップが「現場調査(サイトサーベイ)」です。

今回は、ネットワーク構築業者向けに、「なぜ現場調査が必要か」「現場で何を調べるのか」「どのような資料や情報が必要か」といった視点で、調査の手順や目的を解説します。

なぜ現場調査が必要なのか?

Wi-Fi 構築は「台数を設置すれば終わり」ではありません。建物の構造や利用シーンによって、電波の届き方、干渉、通信速度などは大きく変化します。

特に有料老人ホームでは、

  • 居室数が多く、電波のカバー範囲が複雑
  • 天井裏スペースが限られている(またはない)
  • 電波を遮るコンクリ壁や防火戸が多い
  • 眠りSCAN など常時通信を必要とする機器が導入されている

といった事情から、現地の環境に合った設計が不可欠です。

現場調査の目的とは?

主な目的は以下の通りです。

1. 建物の構造と素材の把握

鉄筋コンクリート(RC)造か、鉄骨造か、木造か。それにより電波の到達範囲や減衰具合が変わります。

2. 通信ニーズのヒアリング

  • 使用する機器の種類(スマートフォン、タブレット、見守りセンサー等)
  • 利用時間帯(24時間稼働の機器があるか)
  • 利用者数(同時接続の端末数)

3. 既存ネットワークの調査

  • 既存のインターネット回線(種類、契約帯域)
  • ルーター・スイッチの構成
  • 既存APの有無・設置場所

4. 設置可能な場所の確認

  • 天井裏や通路にAPを取り付けられるか
  • 電源が確保できるか
  • LAN配線が可能な経路があるか

現場調査の手順

以下は、一般的な調査の流れです。

【STEP 1】事前準備・図面の取得

  • 建築図面(意匠図・設備図・弱電系配線図など)を事前に入手
  • 使用予定の機器リスト(センサー、タブレット等)
  • 職員や施設担当者へのヒアリング内容の整理

【STEP 2】施設内の踏査(現地訪問)

  • 居室、廊下、ナースステーション、食堂、共用スペースなどを歩きながら電波状況を測定(専用アプリやWi-Fi アナライザー使用)
  • APの設置候補地を確認し、電源・配線ルートをチェック

【STEP 3】ネットワーク設備の確認

  • 既設のスイッチやルーターの有無、管理状況
  • ルーターにログイン可能であればIP設計やセキュリティ設定を確認
  • 使用中のSSID・チャネルの使用状況の調査

【STEP 4】干渉・障害要因の調査

  • 電子レンジ、コードレス電話、ナースコール等、2.4GHz帯との干渉要因がないかを調査
  • 居室扉や防火戸の開閉による電波遮断の確認

最低限、現場調査時に知っておくべき情報

現地に入る前、または施設側に事前に確認しておきたい情報には以下があります。

  • 建物の階層・延床面積・構造(RC/S造など)
  • 居室数と入居者数(無線のカバー対象)
  • 導入予定サービス(眠りSCAN・ナースコールアプリ等)
  • 使用予定の端末・アプリケーション
  • 現在の回線事業者と契約帯域
  • 現在のネットワーク管理者の有無
  • 設備・電源の制限事項(例:工事が制限されるエリアなど)

現場調査後にまとめるべき内容

調査結果を基に、以下のようなアウトプットを作成します。

  • AP設置レイアウト図(配置図)
  • 電波強度ヒートマップ(必要に応じて)
  • 通信要件に応じたAPの台数と機種選定
  • スイッチ・ルーター・配線計画
  • インターネット回線の要件確認
  • 導入後の運用方針案(セキュリティやSSIDの設計)

まとめ:現場調査を成功させるカギとは

有料老人ホームでは、電波の安定性とセキュリティ、そして業務機器との親和性が求められます。現場調査を丁寧に実施することで、導入後のトラブルを未然に防ぎ、快適で安全なWi-Fi 環境を提供できます。

現場に入る前の情報整理と、施設スタッフとの連携が最も重要なポイントです。

「とりあえずAPを置いてみる」という設計は、高齢者施設では通用しません。プロフェッショナルとしての目線で、適切な現場調査を行いましょう。


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