【セキュリティ講座④】SOCとMDRとは? EDR/XDRを活かす“運用体制”の現実
はじめに
これまでのセキュリティ講座では、Microsoft Defenderの基本機能やエンドポイントセキュリティ製品の選び方、さらにEDR/XDRの特徴と導入のポイントについて解説してきました。
今回のテーマは、それらを実際に活用していく上で欠かせない SOC(Security Operation Center:セキュリティ運用センター) と MDR(Managed Detection & Response:運用委託サービス) です。
「EDR/XDRを入れたけれど、うまく使いこなせていない」という声は少なくありません。なぜなら、これらの製品は単体では“検知”や“警告”を出すだけであり、最終的に判断・対応するのは人間の役割だからです。
SOC(セキュリティ運用センター)とは
SOCとは、企業や組織のセキュリティログを集約・監視し、インシデントが発生した際に迅速に対応する専門チームです。
SOCの役割
・24時間365日の監視体制
・膨大なアラートの中から本当に危険なものを見極める
・攻撃の全体像を把握し、関係部門にエスカレーション
・改善策や再発防止策の提案
SOCのメリット
・高度な専門知識を持つアナリストが対応
・早期発見・早期対応で被害を最小化
・法令対応や監査にも活用できるレポートを提供
SOCの課題
・専門人材を社内で確保・育成するのは困難
・運用コストが高額になりやすい
・アラートの“ノイズ”をさばくために成熟した運用が必要
MDR(Managed Detection & Response)とは
MDRの特徴
・EDR/XDRからのアラートを専門家が分析
・インシデント発生時には一次対応(隔離・遮断など)を実施
・必要に応じて詳細な調査報告や復旧支援も提供
・月額課金型で導入でき、初期投資が抑えられる
MDRのメリット
・専門人材を自社で抱える必要がない
・24時間監視体制を低コストで実現可能
・最新の脅威インテリジェンスを活用できる
MDRの課題
・外部委託のため、自社業務とのすり合わせが必要
・インシデント対応の最終判断は自社が行うケースが多い
・利用範囲やサービスレベルによってコストが増加する
SOCとMDR、どちらを選ぶべきか?
実際に選択する際には、自社の規模・リソース・求めるセキュリティレベルを考慮する必要があります。
大企業や金融機関
→ 社内SOCを設置し、MDRも併用する二重体制でリスクを最小化
中堅企業
→ EDR/XDRを導入しつつ、MDRを活用して監視・対応を外部委託
中小企業
→ クラウド型EDR+MDRを選び、セキュリティ担当者を置かなくても安心できる環境を整備
重要なのは「自社でどこまで対応できるか」を明確にし、不足を外部サービスで補うことです。
実際の導入・運用の現実
EDR/XDRを導入した企業が直面しがちな課題は「アラートの多さ」と「対応の専門性」です。
例えば、1日に数百件ものアラートが上がった場合、その全てを確認し対応するのは現実的ではありません。
・人材不足:中小企業には専任のセキュリティ担当がいないことが多い
・知識不足:EDR/XDRのアラート内容を理解し、正しく判断するスキルが必要
・対応スピード:初動対応が遅れると、数時間で被害が拡大する可能性がある
こうした現実を踏まえ、EDR/XDRを「導入したら安心」ではなく、運用体制まで含めて設計することが欠かせません。
まとめ
EDRやXDRは非常に強力なセキュリティ対策ですが、それを最大限に活かすには「運用」が不可欠です。SOCやMDRは、その運用を支える仕組みとして、企業規模に応じた柔軟な選択肢を提供してくれます。
・SOCは専門チームを自社または外部に設け、24時間の監視体制を構築する仕組み
・MDRはその監視・対応を外部に委託できるサービスで、特に中小企業に有効
・導入する際は、自社のリソースとセキュリティ要件に合わせて「どこまで内製化するか」「どこを外部に任せるか」を明確にすることが重要
次回(第5回)は、具体的な セキュリティ運用のステップと、企業が直面しやすい落とし穴 を解説します。