【セキュリティ講座②】エンドポイントセキュリティ製品を選ぶ視点とは?~企業に求められる“運用”と“多層防御”の重要性~
前回の「Microsoft Defenderだけで十分?」では、標準搭載のセキュリティ機能の強みと限界についてご紹介しました。今回は、その続編として「他のエンドポイントセキュリティ製品を導入する必要があるとしたら、何を基準に選ぶべきか?」について解説します。
企業におけるセキュリティの基本的な考え方
個人利用であれば、Microsoft Defenderを中心に適切に設定して使うだけで、多くのケースに対応できるのは事実です。
しかし、企業環境では以下のような要素が加わります。
・PC台数が多い:数十台~数百台の端末を一括で管理する必要がある
・機密情報の保護:顧客情報や設計図、個人データなどの漏洩リスク
・標的型攻撃の対象:企業は明確なターゲットとして狙われることがある
・監査・法令対応:ログの保管、インシデント対応履歴などの提出が求められる場合も
このように「規模」「責任」「攻撃の質」が異なるため、エンドポイントセキュリティ製品に求められる要件は個人利用とは大きく変わります。
製品を選ぶ際の4つの視点
検知能力と多層防御
ウイルス対策ソフトは「既知のマルウェアを検知する」だけでは不十分です。
最近では…..
・振る舞い検知(怪しい挙動を止める)
・AI/機械学習による未知の脅威対策
・ランサムウェア対策(ファイル暗号化を検出してブロック)
など、複数の層で守る仕組みが備わっているかが重要です。
管理・運用のしやすさ
セキュリティソフトを導入しても「アップデートが止まっていた」「検知したけど誰も気づかなかった」では意味がありません。
・管理者が一元管理できるコンソールがあるか
・各端末の状態を一覧で把握できるか
・アラートを即時に確認できる仕組みがあるか
といった“運用しやすさ”が実際には非常に大切です。
インシデント対応力
侵入を100%防ぐことはできません。万が一感染してしまったときに….
・感染端末をすぐに隔離できるか
・攻撃経路や影響範囲を可視化できるか
・復旧までの流れをサポートしてくれるか
といった対応力の差が「被害を最小化できるかどうか」を左右します。
コストと導入規模
セキュリティは“高ければ良い”わけではなく、組織の規模や業務内容に見合ったものを選ぶ必要があります。
・小規模オフィスならクラウド管理型の軽量製品
・大規模企業ならEDR(Endpoint Detection & Response)まで含めた高度な製品
このように規模に合わせてバランスをとることがポイントです。
Defenderと他製品を組み合わせるケース
実際には「Microsoft Defenderを無効化して他の製品に切り替える」のではなく、Defenderを活かしつつ、弱点を補う導入方法も多く採用されています。
例:
・Defenderの基本防御+サードパーティ製のEDRで“監視・調査機能”を補完
・Defenderの検知結果をSOC(セキュリティ運用センター)に連携して監視強化
・中小企業向けには、クラウド型の一括管理サービスと組み合わせて運用負担を軽減
つまり「Defenderか、それ以外か?」の二者択一ではなく、「どう組み合わせて多層防御を作るか?」が現実的な選択肢になります。
導入前に確認すべきこと
実際に製品を選ぶ前に、まず自社で整理しておくべき情報があります。
・端末の台数・OSの種類
・持ち出しPCやリモートワークの有無
・これまでのセキュリティ事故の有無
・監査・法令対応の要件
・社内での管理リソース(IT担当者がいるか)
これを明確にすることで「自社に本当に必要な機能」が浮き彫りになり、過剰投資や逆に不足した防御を避けられます。
まとめ
エンドポイントセキュリティ製品を選ぶ際に大切なのは「機能の数やブランド」ではなく、自社のリスクに合った多層防御と、日々の運用を支える仕組みです。
Microsoft Defenderを含め、どの製品にも一長一短があります。だからこそ、「何を守りたいのか」「どのように運用するのか」を整理した上で、最適な組み合わせを検討することが重要です。
次回(③)では、近年注目される EDR(Endpoint Detection & Response)やXDR について、具体的に「何が従来のウイルス対策と違うのか」を解説していきます。